当世書生気質 第十六回(三) [坪内逍遥]

 證據となるは母親が最後に残せし短刀のみ。其短刀の紋所は外に試しを見しなき六ツ鱗の紋章ゆゑ是をたよりに血筋の人にめぐりあわんと此年頃心に念じて俟折から圖らず守山友芳が其友人に誘はれて角海老樓に登樓なし此皃鳥を敵娼とし一夜の客となりたりしを心ともなく氣をつくれば不思議や羽織の紋所が彼の短刀の紋に似たり。


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